『Ryuichi Sakamoto | Opus（原題）』

2023年3月に亡くなる直前に行った坂本龍一最後のパフォーマンスを、息子である映像作家の空音央が記録した「コンサート映画」。『戦場のメリークリスマス』をはじめとする20曲を演奏する姿が耽美なモノクロ映像で残されている。今年9月のヴェネチア国際映画祭でプレミア上映された。

2022年秋。7年にもわたるガンとの闘病生活のすえ、坂本龍一はもはやコンサートを開いて観客の前に立つ力も残っていなかった。聴衆のいない中、3台のカメラに囲まれながら、一人ピアノに向かい、イエロー・マジック・オーケストラ時代の作品から、『戦場のメリークリスマス』（1983）や『ラストエンペラー』（1987）といった映画音楽、そして最後のアルバム『12』に至るまで、キャリアを通じて全20曲を演奏し、別れを惜しむ。2023年3月にこの世を去った作曲家が生み出した名曲の味わいがつまった、洗練された詩的なエレジーとなっている。

1991年ニューヨーク生まれ。父は坂本龍一。ニューヨークと東京を行き来しながら、映像作家、アーティスト、翻訳家として活躍している。2014年、アーティスト集団「Lunch Bee House」を共同設立し、そこで先住民族アイヌに関するドキュメンタリー『Ainu Neno An Ainu』 （2015）を制作。日本への窓映画祭の第一回作品に選ばれている。2017年には映像分野のアジア若手育成プログラム「タレンツ・トーキョー」のメンバーに選出される。志賀直哉の短編小説を原作とした短編映画『The Chicken』（2020）は、ロカルノ国際映画祭の短編コンペティション部門で上映された。現在、初の長編映画『Earthquake』の製作中。