『人間蒸発』

現実に失踪した人間の行方をその婚約者と共に追う、という設定のもとに日本全国を歩き、その取材過程を映画に仕上げた本作。撮影は石黒健治で16ミリのカメラを使っている。ATGが最初に資金提供した作品であり、キネマ旬報第2位、映画芸術第1位、日本映画評論第1位など高い評価を受けた。

プラスチック問屋のセールスマンである大島裁は、縁談により早川佳江との婚約が進んでいた。だがある日、大島が突然、失踪した。
事件を知った今村昌平は、大島の失踪以来自分の殻に閉じこもってしまった早川を説き、大島の消息を彼女と一緒に尋ねるとともにその過程を映画にすることになった。調査が進むにつれ、大島が実直で真面目な青年というふれこみとは逆に、金や女遊びといった裏があったことが明らかになる。
彼が最後に目撃されたのは、会社の資金を手にした直後だった。

1951年、早稲田大学卒業後に松竹大船撮影所に入社し、小津安二郎の助監督を務める。「日本ヌーヴェルヴァーグ」の映画監督の一人であり、54年に日活に移籍し、監督第1作『盗まれた欲情』と続く『果しなき欲望』（ともに1958年）でブルーリボン賞新人賞を受賞。日本映画学校（現：日本映画大学）の創設者であり、『楢山節考』（1983年）と『うなぎ』（1997年）でカンヌ国際映画祭の最高賞パルムドールを2度受賞した、日本を代表する映画監督の一人。